Nov 26, 2007

第1作 「~日本の対カンボジア経済政策~対カンボジアODA政策第1部」

1. はじめに
今日、日本と国際社会との経済的・政治的・文化的な関係は緊密さを増しており、日本はこれまで以上に国際社会との連携を強化しなければならない。日本は、これまでも経済面を軸に国際社会でとても大きな役割を果たしてきた。しかし時代は変わり、これからは中国を始めとした新興諸国の台頭が予想される。そのため、あらゆる分野で戦略的に国家活動を行う必要がある。だがこれまで、政府による「日本のありかた」の見解は、ぼやけたものであった。そのため、2006年に発足した安倍政権による「普遍的価値の共有」「自由と繁栄の弧」外交は、日本の進むべき方向を明確に示し、積極的に行動するものとして、評価されるべきものである。日本は、この目的に基づき国際社会、特に関係が深いアジアとの政策を行っていくべきである。
だが、日本の対アジア政策は、多岐に亘る。そこで、政策による効果が現れやすいカンボジアを対象国とし、日本の政策を考察する。尚、この中には日本の政策と間接的な関与がある、世界銀行などの国際機関の政策も考察の対象とする。よって、この4回分の内容は、カンボジアに対する経済政策を取り扱い、第1回目は、日本の対カンボジアODA政策の概要を記す。
2. ODAの概念
ODA(政府開発援助)とは、①政府ないし政府の実施機関から供与されるものであること、②発展途上国の経済開発や福祉の向上に主として寄与すること、③資金協力(貸付)は、GE(グランドエレメント)が25%以下であること、である。ODAの協力内容は、有償資金協力(円借款)、無償資金協力、技術協力に大別でき、さらに各内容に沿って細かく分類される。
3. 対カンボジアODA政策
3-1 検証意義
対カンボジアODA政策で検証を行う意義は、次にある。
●日本はカンボジアに対して最大の援助国で、カンボジアの復興努力を一貫して支援しているため。 ●ODAによる計画・実施過程・有効性・評価体制が、他の国に比べ、明確になりやすいため。 ●政策の種類は様々であるが、2国間援助の事例は、ODAの内容を把握するのに理解しやすいためである。
3-2 日本とカンボジアとの関係
日本は、カンボジアの最大の支援国である。カンボジアに対する1991年から2003 年までの援助資金供与の内、日本は総額の21.2%を占めている。日本は、2004年度までの累計で総額1,498.11億円を拠出しており、その内訳は、無償資金協力1,021.56億円(68.2%)、技術協力346.54億円(23.1%)、有償資金協力130.01億円(8.7%)となっている。カンボジアがLDC(後発発展途上国)であることから、これまで無償資金協力が占める割合が高く、食料援助、保健医療、教育関連などのBHN(基礎生活分野)を充足するための援助や、道路、橋梁、上水道などのインフラ整備を中心に実施している。また、技術協力では人造り、グッドガバナンス、社会基盤整備、農業、保健医療分野を中心とした支援を、カンボジアの現状に鑑み、制度面・人材面の両方から行っている。有償資金協力は、内戦や政治的混乱により暫く中断していたが、1999年の「シハヌークヴィル港の緊急リハビリ事業」案件から再開し、その後2004 年度には「シハヌークヴィル港緊急拡張計画」および「メコン地域通信基幹ネットワーク整備事業」、2005年度には「シハヌークヴィル港経済特別区開発計画」の調査・設計に円借款を供与している。
対カンボジアの事業実施上の基本的な考え方は、「人材育成・制度整備・インフラ整備を通じ、カンボジアの自立発展性を高めながら、経済成長と貧困削減の両立への協力を行い、人間の安全保障の実現を図る」ことである。これは、日本政府開発援助(ODA)大綱、ODA中期政策及び対カンボジア「国別援助計画」と、カンボジア政府によるカンボジアミレニアム開発目標(CMDGs)、四辺形戦略を念頭に置いて行われている。また、日本はこの考え方を考慮の上、5項目を協力の重点分野とし、プログラムを設定、事業を展開している。(図1)

図1 重点分野とプログラム
3-3 対カンボジア国別援助計画
 カンボジアに対する国別援助計画は、2002年2月に策定されている。その概要は次の通りである。
(1)対カンボジア経済協力を取り巻く状況について
日本のカンボジアに対する経済協力の意義は、●政治的安定の重要性(アジアの平和と安定に必要、内戦時代に逆戻りさせないため。) ●経済的重要性(カンボジアの経済成長は、メコン地域開発や長期的なASEAN全体の経済の活性化にも大きく貢献し、ひいては日本経済にとっても有益であるため。)
また、カンボジアを開発するにあっての課題は、復興と再建についてである。●貧困対策 ●人材の不足 ●諸改革と社会資本の整備 ●地雷除去及び被災者支援
(2)今後の対カンボジア経済協力
日本の経済協力の目指すべき方向性は、●依然経済的困難に直面しつつも、復興に向け努力している同国への支援を継続 ●復興から成長への移行を視野に置きつつ、持続的経済成長と貧困削減の両者にバランス 
●無償資金協力と技術協力を中心に実施 
また、重点分野/課題については、●持続的な経済成長と安定した社会の実現(諸改革支援、経済基礎インフラ、農村開発等貧困対策) ●社会的弱者支援(教育、医療分野等)
●グローバルイシューへの対応(環境保全、薬物対策等)
●ASEAN諸国との格差是正(含むメコン地域開発)
以上が、対カンボジア国別援助計画の要旨である。
4. まとめ
対カンボジアODA政策は、日本の3つの指針と、カンボジア側の2つ指針を柱に、作成されている。そのためこれらは、緻密に構成されており、2国間の現在社会の状況を的確に表していると、私は感じた。さらに、具体的な指標の明確にされ、実施に対しての透明性が高いことには、とても驚いた。
援助の内容は、カンボジアが内戦終結後の復興段階であるため、無償資金協力・技術協力による、法規制定、インフラ整備、基礎的な人材育成がほとんどである。今後もこれらを強化すべきである。一方、有償資金協力は少ない。しかしカンボジア経済も順調に成長しつつあり、有償資金協力を増やしていくことが日本の自助の理念に沿うのではないだろうか。
さらに、援助の方法であるが、カンボジア国内の治安上等の問題から、日本の援助は都市部に集中していた。でも、治安が改善されつつある。そこで、所得格差問題が大きくなりつつある現状を是正するために、ODA政策の積極的な農村部への展開を検討すべきである。なぜなら注意すべき事案がある。それは隣国タイの2006年夏のクーデターで、その原因の1つとして、都市部と農村部の格差の拡大がある。少数派の中間層と大多数の低所得者層とに政権支持層が分離し、選挙の「数の原理」では勝てないため、最終的に軍部が介入してしまったのである。カンボジアで、このような事態を引き起こさないためにも、今後、人材育成を中心として、格差是正を図るべきである。
援助全般について、日本は今後ともカンボジア支援を強化すべきだと、私は考える。なぜなら、カンボジアの経済発展によって、日本経済に良い影響を与えることは、確実だからだ。また支援によって、紛争終結国が自立的で持続可能な発展を遂げる国になったならば、「モデルケース」となり、ひいては日本の国際評価が高まるのではないだろうか。
世間にはODA批判が多く存在する。だが今回、これを作成してみて、私は「これ程適切に税金が使用されている政策はないのでは」と思う程であった。目標、体制、過程、結果、効果、今後の課題が具体的に示され、確実にカンボジアの発展の基礎となっているものであると強く感じた。
次回のレポート内容は、対カンボジアODA政策の具体的な検証を行う。

図2 対カンボジア援助の推移 (支出純額ベース、単位:百万ドル)
ドルベースであるため、為替変動による支出変化に注意が必要

No comments: