Nov 14, 2007

初期クメール建築研究



以下、引用 [Study on Early Khmer Architecture ] from YAMASAKI Toma , WASEDA Univ. Japan
クメール史はアンコール期とプレ・アンコール期に二分されるが、建築を主題とした研究の対象は、長期にわたり、このアンコール期に限られたものであり、さらに早くから整備が進められてきたアンコール地域に限定されてきた。プレ・アンコール期の煉瓦造建築群は、そのあらゆる構成要素に、アンコール期へと脈々と続く形式が見受けられるにもかかわらず、研究の対象からは除外されてきたのである。わずかに見られる既往研究は、E.Aymonier(1844-1929),L.Lajonquiere, H.Parmentier(1871-1949)など、ほぼ1世紀前のフランス人研究者による成果まで遡らなければならない。本研究では、実地調査および文献調査を基に、カンボジア王国のプレ・アンコール期に建立された遺構223を網羅的に扱い、現段階において可能な限り精緻に、建築史学的に諸要素の発展過程を明らかにすることを目的とした。 対象要素として、遺構の配置、平面形状、ニッチ(壁龕)、リンテル(まぐさ)、フライング・パレス(外壁に施される建造物を表現した装飾)を扱い、その形式の分類、変遷、分布を示した。特に、メコン川流域の遺構の諸要素とチャンパ建築との類似性を指摘したほか、外的影響を取り込みながら、独自の選択が繰り返される、諸要素の発展の過程を明らかにし、これまで完全に分断されていたプレ・アンコール期とアンコール期の形式上の連続性を示した。また、アンコール期において、首長国家から脱却し、専制的な王朝が発生したことは、その大規模かつ精緻な造成等から窺われるものの、それを構成する諸要素、特に伽藍配置や平面形態、リンテル等に対するクメールの選択は、プレ・アンコール、アンコールといたった区分を超え、連続したものであることが明らかとなった。

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