Jun 26, 2008

クメール人の家 高床造り

 クメール人の家が高床式なのは、洪水対策のためではありません。なぜなら、クメール人の大部分の農民は、洪水の影響を受けない土地に住んでいるからです。洪水地区に住んでいる農民は、水が杭の足元にも届かないような高い場所に住んでいます。では、どうして高床のでしょうか?それは、森林地方の生活習慣と関連があります。高床の家は、暑熱と湿気の地方の生活条件によく適応しています。6ヶ月間、多量の雨が降り、毛管現象で湿気が上がって来る地域では、大きな利点があります。また、高床造りは、動物の害を受けません。昆虫、爬虫類、鼠、野獣を避けることが出来ます。過去に、スヴァイ・リアンでペストが流行した時、犠牲になったのは、土間の家に住む中国人とベトナム人だったという実例があります。このように、高床造りの家は、湿気が少なく、鼠がいないことで健康的なのです。

 クメール人の家は長方形の小さな塚の上に建てるのが慣例です。そこに、柱を建てます。床は柱に極めて簡単に取り付けられるだけで、屋根組や壁も柱に接合されています。柱と柱の間は、地面から2mくらいの高さで、丸太が支えています。この丸太が、床または割板を支えているのです。かつて、この柱は掘立柱で、その穴を掘る為に、穴掘り人を選ぶための儀式が行われたそうです。柱の材質は、ソクローム、プチェック、トラーチュ、チリックあるいはクロコッなどが用いられ、ごく稀にトバェン、クロン、チュロモッ、スロラオなどが用いられています。また、用材の伐採の時にも、柱の選定のための儀式や相談があり、禁止事項もあるそうです。柱の数は、12本の場合が多く(3本4列)、家が大きくなるに従って、3の倍数か4の倍数で増えていきます。そのうち、何本かの柱だけが、高い場合があります。12本の柱のうち、4本がおおきく、8本が小さい場合は、「ノロノン」と呼ばれる形式となります。 クメール人の家は、高床式なので、階段を登らなければなりません。その階段の数は、5,7,9段といった奇数で、偶数はその家の主人に不幸をもたらすといわれています。高床の下の空間は、畜舎、鶏舎、物置、あるいは作業場として利用されます。畜舎の場合、夜、牛が繋がれ、ここには割竹で作った長方形の飼槽が備え付けられています。農具、牛車、時としては小船などの物置となります。手工業地帯では、ここを作業場にして、機織や陶器(コンポン・チュナン)やざるなどをつくっています。ここは、農民の財産のすべてが置かれる場所なのです。

最後に友達の家を載せておきます。ここにある写真以外にも、もっとかっこいい写真があったのですが、顔が写っているために載せれませんでした。




高床式の典型的なクメールの住居です。だいたい2mくらいの高さの部分に床があります。柱は3本4列で、正面に9段からなる階段があります。来客があったときは、高床の下の空間を使用します。 ちなみに、この家には、電気も水道もガスもなにもありません。炊事は薪で、水は貯めたものを使用します。このように自然に囲まれて、広い土地を有している家は、とても衛生的に保つことが出来るので、快適かつ健康的に生活することが出来ます。


側面を斜めから撮った写真です。屋根が3つ見えると思いますが、建物正面部分の切妻部分と、写真の一番左の部分は増築部分です。もとの建築当初の部分は、中央の切妻部分と、写真では見えてはいませんが、奥の切妻部分です。つまり、建築当初は、切妻が2つ並ぶ建物でした。この友達の家の場合、台所(真の一番左の部分)を増築したために、家に階段が2ヶ所設けられています。今回、台所の内部の写真を載せることはできませんでした。家の、脇には、屋根の谷から集められた雨水を貯めるカメがあります。昔は、これを炊飯に使用したり、水浴びのための水として使用していました。

床下空間の写真です。バイクを駐輪するためにも、使っています。地面に玉石をひいているが見えると思いますが、これは土間コンの施工途中の段階です。

同じく、床下空間の写真です。夜間はここに牛を繋いでおく事もあります。ちなみに、彼の家では、白い牛を2頭使って、とおもろこし畑を耕しています。力の強い水牛ではなく、白い牛にする利点は、長時間、一定の力で働き、また暑さに強いとのことでした。


丸柱と大引きとの仕口です。短手方向の材が下で、長手方向の大引きが上になって、12本の柱の剛性を保っています。また、柱と横材は、楔で留められており、大引きについては、栓が入っています。大引きの上に、根太があり、その上に、床材として割竹が敷かれています。この割竹は、とても通気性がよく、夜も快適に寝れます。また、水やゴミなども、そのまま地面に落とすことが出来、常に室内を清潔に保つことが出来ます。ただ、欠点は下から見上げた時に、すべてが見えてしまうことです。



ここに写っている日本人(私ではありません。) ではなく、その奥に注目してください。女性たちが何か作業しています。また、その横では、ハンモックで赤ん坊の子守をしている男がいます。このように、床下空間は、日常生活の場なのです。ちなみに、この時の作業は、私たちを歓迎するためのバーベキュウ用に、肉を串に刺しているところでした。写真の一番奥には、白いコンクリートブロック造の壁が見えます。もちろん、これも後年の増築で、用途は、水浴び場とトイレです。水自体はきれいなものが貯めてあるのですが、水浴びをするのためには、夜だとロウソクで照さなければなりません。また、トイレは、水を桶で汲んで、自分で流すシステムです。ただ、回りが大自然に囲まれているので、小用のときにこのトイレを使用することはありません。


クメールの家には、農家に限らず、番犬を飼っています。クメール人は、日本人ほど犬を可愛がらず、もっぱら、吠えさせるために飼っているみたいです。この写真の段階では、既に、土間コンを打ち終えています。

これは、また別の家の小屋組みの写真です。谷と棟木が見えます。屋根タイルは、ただ引っ掛けてあるだけです。



この家の場合、内部の部屋の仕切りは、屋根の構造と無関係です。この家は、幹線道路に面しているために、電気が来ています。



床に直接、座ったり、寝っ転がったりすると、痛いので、ゴザを敷いて、蚊帳を掛けて寝ます。就寝時には、扉を完全に閉め、施錠します。

これも、また別の家です。この家の階段も9段で、階段自体は中央に配置されています。そのほかのつくりは、既に紹介した家とほぼ同じです。
ただ、最近は家の趣味も近代化してきたようで、主人がお金のある場合、高い杭の部分をプレキャストコンクリートにして、上等な家に格上げしたり、床下部分全部をコンクリートブロックの壁で囲って、新たな部屋とする家が増えつつあります。


内部の部屋は、建物の一番奥にあり、それは中央に廊下兼祭壇の場所があり、その両脇に寝室があります。ただ、部屋といっても、壁で空間を仕切っているだけで、天井はありません。扉もなく、布で目隠しをしています。


料理は、このように、割竹の上に直接置いて食べていました。食器が不安定なため、ときどき、下に落ちることがありますが、そんなことは気にしません。食後の清掃もとても楽で、すぐに、寝食を同じ場所ですることができます。

以上が、私の知っているクメール人の農家の生活風景です。

5 comments:

Chumnith said...

はじめまして!

福井大学(学部)で建築を勉強しているカンボジア留学生のナイ チュムニットと申します。
建築の勉強はまだ若いですが、NISHIKAWAさんが記載したとおり、カンボジア民間の生活
はこういう感じです。

民間の生活を深くご存知ますね。
いろいろ参考できました。

nisshi? said...

こんにちは!

私は、友達の家に1ヶ月くらい、泊めてもらい、とってもいい体験をすることが出来ました。

ところで、チュムニットさんとは、mixiでよく、私とメッセージのやり取りをしていたじゃないですか。お忘れですか?

LIMEI said...

わかりやすい説明をありがとうございます。すごく興味深いです。
高床式だと床下でハンモックでお昼寝できるのが最高にいいと思います。
でも親しくしている人の家は高床式でないので残念です。ネズミも出ますし・・・

Chumnith said...

nisshi san,
わかりました。
覚えてるよ。

カンボジア住宅に泊まられて、よかったですね。

nisshi? said...

皆さん、コメントありがとうごいます。

>limei
ハンモック! ともていいですね。7月11日から14日まで、また、写真の友達の家に泊まる予定なので、ハンモックに揺られてきます。limeiさん、いい案、ありがとうございます。

でも実は、うちの大学のカンボジア人の家には、常にハンモックが掛けてあり、私は毎日、それに揺られているのですよ。ははは

>chumnithさん
また機会があれば、どこかでお会いしましょう。