サンボー・プレイ・クックは、極東学院院長フィノ(L. Finot)の碑文(1911年に発見されたもの)研究によって、7世紀前半のIsanavarman王の都であることが突き止められたらしい。これは、『随書』(巻82真臘伝)に載る「伊奢那城」であるとのこと。その後、パルマンチェ(H. Parmentier)は、このフィノ論文に基づき、この遺跡の美術様式を精細に分析した結果、アンコール遺跡群とは異なる点に注目して、これをアンコール以前の美術様式と定義した。ここで初めて「前アンコール様式」として認識されたるに至ったらしい。
そのサンボー・プレイ・クックについては、その『随書』の中に
「郭下二万余家。城中有一大堂、是王聴政之所。摠大城三十城有数千家」
と記述されているらしい。
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サンボー・プレイ・クックとは、クメール語で「森の寺院」という意味らしい。
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この写真に写っている青い帽子は、カンボジア女性お決まりのデザインのような気がする。
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他の遺跡も、このN18の様に樹木に覆われていたらしい。
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サンボー・プレイ・クック様式のまぐさ
このまぐさ石のデザインは、インド・アジャンタ石窟などに源流をみることができるらしい。マカラを両端に置き、その口より吹き出る帯が特徴的であるそうだ。円弧を描く帯は楕円形のメダルで分割され、帯の下には垂下がる懸垂網が配置される。この網の端部には要所に蓮の花が用いられるようだ。
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C1の彫刻
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唯一 だけすべて砂岩で造られているN17祠堂は、陸屋根で箱型をしており、柱間に砂岩の壁板を嵌め込んでいる。木造の意匠を石造へ転用しようとしたものか?
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S2祠堂は、とうとう崩れ落ちてしまった。
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S2の内部には、N17同様、石柱を建てた陸屋根建築が存在するが、こちらの壁面は開放されている。
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先の尖った馬蹄形アーチは、インド建築に数多く見られるデザインだそうだ。また、サンボー・プレイ・クック以後のデザインには用いられなくなったものらしい。この顔は、どこの民族の顔なのだろうか。
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迫り出し積み構造の特徴が良くわかるような気がする。壁からちょこちょこ飛び出している突起は、ジャック・ドゥマルセが言う、木造天井を支えたものなのか?
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S10は、なぜか八角形平面だ。壁面に彫られているものは、「空中宮殿」という彫刻だそうだ。
サンボー・プレイ・クックへは、カンボジア人の知り合いに連れて行ってもらった。今では、道が整備されているので、プノンペンから日帰りが十分できる場所にある。その土木技術者の彼も、いいものを見たと言っていた。わたしも石造の中の木造意匠を見つけられて、とても興味深かった。
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