バン・ルン(Bang Lung)から車で15分ほど行った処にあるクルン族の村である。ここには、空中に浮いた鳥籠のような、また、火の見櫓のような構築物がある。これは、高床式の花婿用の住居(Groom's house)だそうだ。クルン族の男は、高所に住むことにより、勇気のある大人の男性として認められるそうだ。結婚前は、ここに一人で住み、結婚後は花嫁と生活することもあるとのこと。その花嫁の家(Bride's house)は、シンプルかつこじんまりとした高床式の小屋である。
材料は、細い丸木、竹、ヤシの葉、それらを固定するための蔦のみである。
構造として、6本の丸木で住居本体を支え、前柱2本で前段を支持している。脚としての柱は、末広がりとなっており、構造的な安定をもたらしている。その足元は、掘立てである。
住居は竹や枝を編み込んで籠とし、弧を描いている。その編んだ格子にヤシの葉を結びつけて、風雨を防ぐ構造となっている。また、妻側の前後に2本ずつの細木が刺さっており、その先端は、折り曲げる加工が意図的されている。
他の特徴として、内側からヤシの葉を結び、外側に骨組みが見せていことも挙げられる。これは、高所では外部から作業ができないためであろう。つまり、施工順序として、穴を堀って、柱を立て、階段をつくり、床を架工する。その次に、長手方向の1辺から格子を編み始め、それを弧を描くように曲げて、他の辺に固定する。そこにヤシの葉を編み止める。最後に、妻側の壁を構成する。よって、このような屋根がない形態になった理由は、高所での作業ができない上に、小規模な構造から内側の作業によって、造り上げることができるからと推測される。
すごく簡素なつくりであるが、竹編みの技術や妻側の木の先端の加工、また、3.7mもの床高での生活の意味などを考えると、それぞれが独自の文化的背景から形成されていると感じることができる。これらを読み取ることに、バナキュラー建築の面白さがある。
しかし、鳥籠が串で空中に突き上げられているようで、大変奇妙である。小規模で、一人が臥するにしても狭い。
しかし、鳥籠が串で空中に突き上げられているようで、大変奇妙である。小規模で、一人が臥するにしても狭い。
あとから思ったが、建物だけを観ていると、空葬の施設のような雰囲気を持っている。インドネシアの屋根裏部屋に遺体を安置して空葬する習慣を思い起こさせた。
床高0.9m、内部はもちろん天井はなく、床から桁まで約1m、床から棟木まで約2.1mで、人が立つと頭をする状態である。写真の反対側に入り口があり、そこには木製の扉450mm×900mmがある。入り口には、階段はなく、踏み段として、丸太が置いてある。この扉にはヒンジが付けられているが、もちろん、これは伝統技術ではないと思う。
また、妻木は、半割りの竹φ700mmが使用され、交点から200mm跳ね出した叉手となっている。
このクルン族の特徴の一つが妻木の彫刻である。私が、ラタナキリに行きたいと思ったのは、王宮に展示してある木造住居の写真を見たときで、そこにこの妻木を持つ建物もあった。その写真は山岳民族の特徴を端的に写し出しており、その異文化に起因する興味と、めったに行かない地区にあるという理由から、ずっといつかは行きたいと思うようになっていたのだった。
以前に調査を行った村もそうであるが、井戸は村の中心性を知る上で重要な要素である。
ちなみに、この子供たちは、右下のiPadを見に集まってきた。写真右下の2人は友達の姪っ子で、私が村を散策している間、暇つぶしにiPadでゲームをしていた。そこに、めずらしさのためか、集まってきたのだ。余談だが、バン・ルンでも十分に電波があり、iPadでFacebookにアップすることできた。カンボジアでは、月10ドルでインターネット使い放題だそうだ。そのiPadは、私がカンボジア人の友達に買ってあげたのだが。
以下、参考図書
以下、参考図書
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